訪問看護の現場で、「もっと看護の知識があれば、利用者さんを多角的に見られるのに」「急な変化があった時、自信を持って判断できるようになりたい」と感じたことはありませんか?
リハビリの専門家として関わる中で、看護の知識が不十分で不安がある理学療法士・作業療法士の方もいるのではないでしょうか。
この記事では、そんなあなたの悩みを解決する一つの方法として「在宅看護指導士」の資格をご紹介します。理学療法士・作業療法士でも受験可能な在宅看護指導士の資格を取得することで、看護の知識が得られるため専門性が向上します。
実際に私は、今年の第2回在宅看護指導士の試験に合格し、勉強してきた過程で多くの学びがありました。
この記事では、資格取得のメリットから、受験資格、申し込みから合格までの5つのステップ、気になる費用や難易度、そして私が合格した勉強法まで、詳しく解説します。この記事を読めば、在宅看護指導士の資格取得までの全体像が明確になります。
在宅看護指導士とは?理学療法士が知るべき基礎知識

在宅看護指導士とは、一般社団法人全国在宅医療マネジメント協会(JHMA)が認定する民間資格です。在宅看護指導士は、在宅看護や訪問看護の分野において、専門知識と実践的なスキルを持っていることを証明します。
学習では、利用者の状態を判断する実践的なケア技術だけではなく、訪問看護ステーションの運営やリスク管理、経営に関する知識まで、幅広い内容を学びます。
つまり、在宅看護指導士は、現場でのケア能力だけでなく、事業所全体を見渡せる広い視野を持っていることを証明する資格です。
第3回在宅看護指導士の受験要項

在宅看護指導士の試験は、年1回開催されます。第3回在宅看護指導士の受験要項は、以下のとおりです。
試験日時 | 2026年6月8日(月)~2026年6月21日(日) |
試験会場 | パソコン試験(CBT試験) |
受験料 | 11,000円(税込12,100円) |
試験時間 | 90分 |
出題範囲 | 在宅看護指導士公式テキスト及び時事問題 |
出題数 | 90問 |
出題形式 | 択一問題 |
試験申し込み期間 | 2025年10月31(金)~2026年5月20日(水) |
審査申告期限 | 2026年5月31日(日) |
申し込み方法 | 2025年10月31日より申し込み開始(協会ホームページより) |
理学療法士・作業療法士が在宅看護指導士を取得する3つのメリット

訪問看護の現場で働く理学療法士や作業療法士が在宅看護指導士の資格を取得するメリットは、以下の3つです。
- リハビリの視点に「看護の視点」が加わる
- 将来のキャリアアップに役立つ「管理・運営スキル」が身に付く
- 多職種連携の質が向上する
リハビリの視点に「看護の視点」が加わる
一つ目は、リハビリ専門職の視点に「看護の視点」が加わることです。緊急性の見極め方や多様な疾患への対応、家族へのケアなど、普段の業務では深く学ぶ機会の少ない看護領域の知識を体系的に学ぶことで、より多角的なケアを提供できるようになります。主に以下のようなスキルを学べます。
- 在宅での緊急性の判断
- 疾患別のケア(悪性疾患、糖尿病、心不全、脳血管障害など)
- 生活を支えるケア(服薬管理、栄養、清潔保持、排泄、褥瘡やフットケアなど)
将来のキャリアアップに役立つ「管理・運営スキル」が身に付く
二つ目は、将来のキャリアアップに役立つ「管理・運営スキル」が身に付くことです。保険制度の知識から事業所の経営やブランディングまで学ぶため、管理者やリーダーを目指す上での強みになります。主に以下のようなスキルを学べます。
- 訪問看護事業の運営に必要な知識(保険制度、契約、苦情対応)
- 起こりうるリスクへの備え(個人情報、安全、災害、感染対策など)
- 経営とブランディング
多職種連携の質が向上する
三つ目は多職種連携の質が向上する点です。看護師の役割や考え方を理解することで、チーム内での情報共有や意思疎通がよりスムーズになるため、利用者にとって最適なサービスを提供できます。主に以下のようなスキルを学べます。
- 利用者だけでなく、家族全体を支えるための家族ケア
- 地域の他事業所と連携するための営業活動の基本
在宅看護指導士の受験資格や実務経験

ここでは、在宅看護指導士の受験資格や実務経験について解説します。
理学療法士や作業療法士、言語聴覚士も受験可能
在宅看護指導士の資格は、看護師だけではなく、理学療法士や作業療法士、言語聴覚士も受験できます。また、受験資格として訪問看護ステーションでの勤務経験は必須ではありません。
病院の退院支援部門やクリニックの外来、介護施設、デイサービスなど、地域で暮らす方々の療養を支える仕事に携わっていれば、勤務先の種類は問われません。常勤や非常勤といった雇用形態による制限もなく、幅広い立場の専門職が挑戦できる資格です。
必要な実務経験は2年以上
受験資格として、理学療法士や作業療法士、言語聴覚士の国家資格免許を取得してから、2年以上の実務経験が必要です。実務経験は、どの領域(病院、施設、在宅など)で積んだものでも構いません。
重要なのは、理学療法士や作業療法士、言語聴覚士の免許を取得してから2年以上の実務経験があることです。ご自身の経歴が条件を満たしているか、確認してから受講しましょう。
在宅看護指導士になるには?資格取得までの5ステップ

在宅看護指導士の資格取得までには、5つのステップがあります。
- 公式テキストの購入
- 受験の申し込み
- 受験資格の審査
- CBT試験会場の予約と受験
- 合否通知
ステップ1:公式テキストの購入
在宅看護指導士になるための最初のステップは、公式テキストを購入して学習を始めることです。試験は公式テキストの内容と時事問題から出題されるため、公式テキストは必須です。
公式テキストは、協会公式サイトやアステッキホールディングス、楽天、アマゾンなどで購入できます。注意点としては、協会公式サイトはテキストしか購入できません。アステッキホールディングスでは、公式テキストだけではなく、以下の問題集も購入できます。
- 在宅看護指導士 再現過去問集(基礎編)
- 在宅看護指導士 再現過去問集(応用編)
- 医療系資格試験対策アプリ「ケアまるPro」
- 模擬問題冊子
- 動画講座
医療系資格対策アプリ「ケアまるPro」は、再現問題集をアプリで使用できるため、隙間時間に問題を解くことができるため、おすすめです。
アステッキホールディングスの資料や問題集は、楽天やアマゾンでも購入できます。ポイントを貯めたい方やポイントを使用できる方は、楽天やアマゾンで購入した方がお得です。

私は、公式テキストとアステッキホールディングスの再現過去問題集(基礎編・応用編)、ケアまるProを購入しました。スタートアップセットという名前で販売されています。
ステップ2:受験の申し込み
学習と並行して、定められた期間内に受験の申し込みを済ませます。申し込みは、協会公式サイトの専用フォームから行い、受験料の支払いも同時に手続きします。1週間程度で、自宅に受験書類一式が届きます。
申し込み期間は、2025年10月31日からです。
ステップ3:受験資格の審査
受験申し込みを終えると、次は受験資格を満たしているかの審査が行われます。申し込み後に利用できるようになる「受験者専用ページ」というアプリを使い、2年以上の実務経験の申告と、保有する国家資格の証明書の画像を提出します。
提出された情報をもとに協会が審査を行い、結果は約1ヶ月以内に圧着はがきと受験者専用アプリの両方で通知されます。審査を通過した場合、次のステップである試験会場を予約するためのログイン情報も同時に届きます。
ステップ4:CBT試験会場の予約と受験
審査を通過したら、試験の予約です。在宅看護指導士の試験は、全国に300ヶ所以上あるテストセンターの中から、自分の都合の良い日時と会場を選んで受験するCBT方式という形式が採用されています。
会場の予約は、2026年4月15日から専用サイトで始まります。審査通過時に通知されたログイン情報を使ってサイトに入り、希望の会場と日時を選んで予約手続きを完了させましょう。あとは試験当日に、予約した会場で受験します。
ステップ5:合否通知
合否の結果は、後日、郵送される圧着はがきと「受験者専用ページ」アプリの両方で通知されます。結果通知の時期は、2026年7月頃予定です。
合格していた方には、認定登録の手続きが完了した後、9月下旬頃に「認定証」と「認定バッジ」が郵送で届きます。これをもって、正式に在宅看護指導士として認定されます。
在宅看護指導士認定試験の概要|費用や難易度は?

何かの資格を取得する際は、試験方法や費用、難易度が気になる方が多いです。ここでは、在宅看護指導士になるための概要や費用、難易度を解説します。
試験形式と試験日
在宅看護指導士の試験は、CBT(Computer Based Testing)方式で行われます。CBTとは、全国各地に設置されたテストセンターへ行き、会場のパソコンを使って回答する試験形式のことです。
CBT方式の大きな利点は、定められた試験期間内であれば、数多くの会場と時間帯の中から自分の都合に合わせて受験日時を選べることです。例えば「2026年6月8日から6月21日まで」といった期間が設定され、その中から日時を予約します。仕事やプライベートの都合などを調整しやすいため、働きながらでも受けやすい試験方式です。
合格率と難易度
合格率ですが、過去の試験ではおおむね60~70%台で、決して低すぎる数値ではありません。公式ホームページでは、合格率を以下のように公表しています。
開催年 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率(%) |
第1回(2024年) | 3,583名 | 2,296名 | 64.1% |
第2回(2025年) | 2,683名 | 1,917名 | 71.4% |
在宅看護指導士の試験は、これまで2回しか開催されていません。出題範囲は「公式テキスト」と「時事問題」です。専門的な内容ではありますが、公式テキストの内容をきちんと学習すれば、十分に合格を目指せる難易度といえます。

在宅看護指導士は、合格点が公開されていません。これまでのテストでは合格率は64.1~71.4%です。相対基準方式を採用し、合格率が60~70%前後に収まるようにしている可能性も考えられます。
資格取得にかかる費用
在宅看護指導士の資格を取得するために、最低限必要となる費用は以下の3つです。
- 受験料:12,100円(税込)
- 公式テキスト代: 6,050円(税込)
- 認定登録料:12,100円(税込)
合計で30,250円(税込)が必須の費用となります。その他費用として、配送料や各種手数料が少額かかります。任意で協会が開催するWEB講習会などを受講する場合や再現過去問題集、模擬試験などを購入する場合は、別途費用が必要です。
資格取得後も5年ごとに更新があり、更新ごとに5,500円必要です。ただし、ココリンク(※)加入者(月額550円)は原則免除となります。ココリンクに加入しない場合は、更新時にeラーニング受講料(38,500円)と更新料(5,500円)が必要となるため、ココリンクに加入した方がお得です。
ただし、ココリンクに加入した場合は、次回の更新までに動画視聴や対象イベントに参加し、60単位を取得する必要があります。
※ ココリンクとは、資格更新システムです。月額550円で講義動画視聴やオンラインセミナーの受講ができます。

資格を取った際、更新システムがあるかどうかは賛否がある部分だと思います。私としては、資格取得がゴールではないので、継続するためのシステムは必要だと感じています。
合格に向けた試験対策|公式テキストが必須

理学療法士の私が、実際に在宅看護指導士の資格を取得した試験対策方法を解説します。
学習の中心は公式テキストと再現過去問題集
実際に使用した参考書やツールは以下の5つです。
- 在宅看護指導士公式テキスト
- 在宅看護指導士 再現過去問集(基礎編)
- 在宅看護指導士 再現過去問集(応用編)
- 医療系資格試験対策アプリ「ケアまるPro」
- 模擬問題冊子
在宅看護指導士の試験問題の大部分は公式テキストから出題されるため、公式テキストは必須です。私は再現過去問集を中心に学習したかったので、アステッキホールディングスで公式テキストと再現過去問集(基礎編と応用編)、第2回模擬試験を購入しました。再現過去問題集を購入すると、「ケアまるPro」というアプリを使用できます。
ケアまるProでは、再現過去問集をアプリで使用できるようになるため、隙間時間を活用し、効率良く勉強ができます。ケアまるProでは、在宅看護指導士の受験者グループがあり、SNS交流も可能です。
ステップ1:試験日を決定する
最初に試験日を決定しましょう。CBT試験のため、期間内で試験日を自分で決められます。試験日が決まっていないと、勉強に集中できなかったり、ダラダラと勉強したりする可能性があります。まずは、試験日を最初に決めて、身を引き締めましょう。
私は2ヵ月の勉強で合格しましたが、訪問看護で勤務しているため、制度の理解はありました。加算などの制度がわからない方は、3~4ヵ月前から勉強を開始した方がいいかもしれません。
ステップ2:再現過去問集を解きながら公式テキストを確認する
再現過去問集を解きながら公式テキストで内容を確認します。問題集で出てきた部分を公式テキストにマーカーでチェックします。公式テキストから読み始めてしまうと、重要な部分がわかりにくいです。
再現過去問集から勉強することで、公式テキストの中で重要な点がわかりやすくなるため、おすすめです。勉強していない状態で再現過去問集から始めるため、わからない問題が多いのは当然です。問題が難しいからといって、諦めないようにしましょう。
ステップ3:公式テキストを読む
再現過去問集をすべて解いたら、次は公式テキストを読みます。このときの公式テキストは、マーカーでいっぱいになっていると思います。マーカーの部分をしっかりと読んで、理解を深めましょう。
ステップ4:ケアまるProを使用して、再現過去問集を再確認する
ケアまるProを使用して、隙間時間に再現過去問集を解きます。このときは、公式テキストを確認せずに問題を解きます。再現過去問集は章ごとに区切られているため、自分の苦手な章を確認できます。
ステップ5:苦手な章を公式テキストと再現過去問集で確認する
苦手な章の部分を公式テキストで再度確認し、再現過去問集で満点がとれるようになるまで続けましょう。
ステップ6:模擬試験に挑戦する
アステッキホールディングスで購入できる模擬試験に挑戦します。模擬試験をすることで、出題傾向や問題レベルを把握できます。模擬試験は、自宅で実施するため仕事で忙しい方でも安心して受けられます。結果が送られてくる関係上、解答日に締め切りがあるため、注意してください。
ステップ7:模擬試験の結果を確認し、間違った部分を確認する
模擬試験を締め切りまでに受けると、後日採点結果と成績表、解答・解説集が送られてきます。間違った部分を公式テキストで確認し、理解を深めます。
在宅看護指導士に関するよくある質問

在宅看護指導士に関するよくある質問をまとめました。気になる方は参考にしてください。
資格を取ると給料は上がりますか?
資格を取得したことで、すぐに給料アップに結びつくかどうかは、勤務先の評価制度によります。民間資格であるため、診療報酬に直接関わるものではなく、一律の資格手当が用意されている事業所はまだ限られています。
しかし、この資格で得られる看護の視点や事業運営の知識は、専門性を高めるために必要です。管理者への昇進や、より良い条件の職場へ転職する際に、ご自身の能力をアピールする有利な材料となり、長期的に見れば収入アップにつながる可能性はあります。
資格に更新は必要ですか?
在宅看護指導士の資格には更新制度があり、有効期間は5年間です。資格を維持するためには、5年間で定められた60単位を取得する必要があります。
単位取得は、e-ラーニングサービス「ココリンク」で行います。「ココリンク」(月額550円)に加入していると、更新にかかる費用が原則免除されることがメリットです。最新の知識を学びながら、効率的に資格を更新できます。
「ココリンク」に加入しない場合は、更新時にeラーニング受講料(38,500円)と更新料(5,500円)が必要になります。
似ている資格との違いは何ですか?
同じ協会が運営している資格に「在宅介護指導士」があり、しばしば比較されます。この2つの資格は、目指す専門性の焦点が異なります。
在宅看護指導士
看護の実践的なケアに加え、家族支援やリスク管理、事業運営、経営・ブランディングといった、訪問看護ステーション全体の質を高める視点に重きを置いています。
在宅介護指導士
疾患の知識も学びますが、それに加えて緊急時の対応や災害への備えなど、より介護の現場での実践的な対応力を高めることに焦点を当てています。
ご自身のキャリアプランや、深めたい専門領域に合わせて、どちらがより適しているか考えましょう。
まとめ:看護の知識を身に付けたい理学療法士や作業療法士には、在宅看護指導士がおすすめ

今回は、理学療法士・作業療法士が在宅看護指導士になるための方法を、メリットから具体的なステップまで詳しく解説しました。
記事の重要なポイントは、以下のとおりです。
- 理学療法士・作業療法士も実務経験2年で受験可能
- 看護ケアだけでなく、事業運営やマネジメントスキルも学べる
- 合格率は60〜70%台で、公式テキストの学習が重要
- 資格取得までには5つのステップがある
リハビリの現場で、看護の視点を身に付けることは、専門性のレベルを引き上げ、利用者様やご家族からの信頼をさらに深められます。リハビリの専門知識に看護の知識が加わることで、チームにとって重要な存在になります。
しかしながら、理学療法士や作業療法士の方は看護の知識を得るためにどのような勉強をしたらいいのか迷う方も多いと思います。
在宅看護指導士は、在宅ケアで必要な看護を学ぶことができ、資格取得後も継続的に学ぶ環境が用意されています。看護の知識をつけて、リハビリの臨床レベルを上げたい方はぜひ在宅看護指導士に挑戦してみてください。
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